日本戦略研究所
中国人の犯罪急増 追いつかぬ捜査
2002/05/25 (産経新聞朝刊)
治安 襲来する事件(18) 【進化する魔手】日本はまさに“犯罪天国” ( 5/25)
「ニコイチって言葉、知ってるか」。闇の世界で中国人犯罪グループとつながりを持つ暴力団幹部が問い掛けてきた。「二個で一対」という意味で、カード偽造グループが新たに考え出した犯罪の隠語だそうだ。得意げに明かした、その手口とは…。
まず、Aが金融機関に口座を開設し、一億円を入金。受け取ったキャッシュカードを複製する。磁気データもそっくり同じだが、カードに刻まれた名前の一部に、よく見れば分かる程度の違いを故意に作る。次に、別人のBが複製カードでATM(現金自動預払機)から五千万円を引き出す。
数日後、Aが金融機関へ行き、「残高を確認したら、半分引き出されている。どうしてくれる」と騒ぎ出す。金融機関は引き出しデータを示し、「あなた自身が引き出したことになっている」と説明する。
Aは渋々納得するが、帰る直前に気付いた振りをして、「磁気記録のデータではなく、カードの表書きをカーボン複写した控えを見せてください」。じっくり、見比べたうえで、「浮き出しで記載された私の名前のこの文字の字体が違っているじゃないですか」と違いを示して詰め寄る。金融機関はこれを認め、管理責任の不備をわびる。そして、Aには保険から五千万円が支払われる−という流れになるという。
クレジットカードやキャッシュカード、運転免許証などのカード偽造は中国人が日本で行う代表的な組織犯罪だ。彼らは「ニコイチ」で、次なる稼ぎを狙っている。 ≪電車で万引行脚≫
カード犯罪やパチンコ景品の不正取得、ピッキング盗…。「潜入 在日中国人の犯罪」の著者でジャーナリストの富坂聰氏は、「中国人にしかできなかった犯罪ではない。日本人も考えることができた。それを中国人に全部やられてしまった」と分析する。
確かに彼らの犯罪に対する努力はたくましさをも感じる。富坂氏は「(彼らは)能力的なものにふたをしない。実際にやり、千里の道を達成してしまう。偽造旅券も最初は見破られるものだったが、二、三年の技術革新で入管も舌を巻くほどのものとなった」と話す。
平成十二年にピークを迎えたピッキング盗は一時、減少した。社会問題となり、彼らは別の犯行に走った。エステ強盗もそうだが、鉄道沿線の駅の近くにある量販店を狙った窃盗、それも比較的軽視される万引だ。
車で新宿を出発し、中央線沿いに量販店で万引を繰り返す。発覚しないよう、盗むのは各駅でわずか二、三点。終点駅・高尾で犯行を終えたら盗品はスポーツバッグに入れ、旅行者を装って電車で戻る。車では検問に遭う危険があるからだ。
≪刑務所はホテル≫
もはや、日本では中国人犯罪者に歯止めは利かない。在日中国人向けの中国語新聞「東方時報」の編集長、蘇霊氏は「上海で女性から持ち出された別れ話に怒った男が女性の顔に硝酸をかけ、大やけどを負わせた。男は死刑になった。日本では傷害罪だろう。中国人は同じ犯罪でも日本の刑罰の方が軽いということを分かっており、日本を甘く見ている」と強調する。中国では贈収賄や窃盗、強姦、密輸でも死刑になりうる。
「日本ほど仕事のしやすい国はない。また日本に帰ってくる」とまで豪語したという中国人犯罪者。服役しても刑務所では三度の食事、風呂もある。さらに、作業に対して金まで支払われる。刑罰は軽く、刑務所は快適な「ホテル」。彼らにとって、日本はまさに“犯罪天国”の何物でもない。
「このままいくと中国人が増え、偉くなってしまうのか」と、警察庁幹部は真剣な顔つきで話す。日本人が加担する偽装結婚を挙げ、「昔は日本人には『戸籍が汚れる』という風潮があった。しかし、今は違う」とこぼし、モラルの低い日本人を巧みに操る実態に恐怖感さえ感じるという。別の幹部も「不法滞在は今後も増え、外国人犯罪者にとってますます活動しやすい環境になる」と危惧(きぐ)する。
富坂氏が「彼らは駐輪場の近くは絶対に通らない。職務質問されるから」と語る中国人犯罪者。生きていくための彼らの知恵と機転は、“犯罪天国”の中で進化し続ける。日本の治安当局に対抗しうる有効策はあるのだろうか。
◇
「襲来する事件」は田中夕介、将口泰浩、石橋文登、鈴木哲也、中村将、大塚創造、楠秀司、吉村英輝が担当しました。
2002/05/24 (産経新聞朝刊)
治安 襲来する事件(17) 【防塁の崩壊】犯罪急増追いつかぬ捜査 ( 5/24)
「(犯行グループを)確保した」
平成十二年、大みそか。警視庁捜査一課の幹部は、無線から流れるその声を世田谷一家惨殺事件の捜査本部がある成城署で聞いた。即座に聞き返した。「撃たれた捜査員はいないか」
この十六日前に東京都葛飾区の歯科医師宅で起きた強盗傷害事件。散弾銃六丁とライフル銃一丁、実弾五十発が奪われ、銃を使ったさらなる凶行を恐れた同庁は異例の特別捜査本部を設置し、捜査。台東区のマンションにある中国人グループのアジトを突き止めた。「玄関から入り、(捜索)令状を見せる正攻法では撃たれる」。取り押さえてから令状を示すという決断を下さざるを得なかった。捜査一課の特殊班の投入、閃光(せんこう)弾の使用も決めた。
「役者(犯人)がそろった」。午後六時すぎ、犯行グループの五人が室内にいるとの連絡が届いた。「部下が殉職するかもしれない」。捜査幹部の脳裏をよぎる。しかし、凶行を防ぐにはゴーサインを出すしかない。
特殊班を中心とした突入班は、マンション三階の一室の玄関前とベランダ側の二手に分かれた。防弾チョッキに二重の盾、拳銃、そして閃光弾。犯人の五人がベランダ側の部屋にいるのを確認した瞬間、突入班はハンマーで窓ガラスを割り、閃光弾を投げ込んだ。室内には大きな音が響き、強い光が。「ひとつ間違えば猟銃で撃たれる」。決死の思いで飛び込んだ捜査員らは、五人の身柄を確保した。十五分間の逮捕劇。捜査員らの顔は真っ青で、寒さにもかかわらず汗びっしょりだった。
≪「家族殺すぞ」≫
「殉職者が出てもおかしくなかった」。当時の捜査幹部は述懐する。しかし、室内から猟銃は見つからなかった。犯行グループは単に金になると思い盗んだだけで、闇ルートでさばけなかったため川に捨てていた。
いとも簡単に、ためらうことなく人を殺す中国人犯罪。“完全武装”した捜査員らの突入は、まさに凶悪集団と化した中国人犯罪の実態を裏付ける。警察庁刑事局の吉村博人局長は中国人犯罪グループについて、「どういう集団なのか分からない。情報を取らなければならないが、追いついていけないのが現状。かつて経験したことがなかった」と語る。
彼らは日本の捜査当局の通訳不足にも付け込む。「取り調べのたびに通訳を依頼され、半年でやっと数件を送致した。すべて処理すると五年はかかる」。ある捜査員は中国人犯罪の捜査の歯がゆさを打ち明けた。「国の家族を殺すぞ」と通訳人を脅迫したり、通訳人を買収し有利な通訳をさせたりするケースもある。
日本の警察をあざ笑うかのように「稼ぐだけ稼ぐ」ため、犯罪を続ける。その彼らに立ち向かう警察当局の苦悩を物語る出来事があった。 ≪警察の限界≫
「中国人かな、と思ったら一一〇番」。
警視庁は中国人グループとみられるピッキング盗がピークを迎えた十二年、こうした表現が入った防犯チラシを作製した。
「あなたが管理するマンション あなたの部屋がねらわれています」
「中国人らのマンション空き巣が多発しています」と注意を呼びかけ、最後に
「中国人かな、と思ったら一一〇番」「中国語で話しているのを見かけたら一一〇番」とした。
しかし、同庁は「配慮に欠ける」との指摘を受け、回収。同庁のある幹部は当時、「エスカレートする一方のピッキング被害をなんとか防止したいという熱意からのもので他意はなかった」と弁解した。
このチラシこそ、警察当局の“本音”で、多発する中国人犯罪に苦慮する真の姿を浮き彫りにした。
「カード偽造やピッキング盗、エステ強盗など中国人犯罪は変遷してきた。彼らの変化に対応するのに捜査側には限界がある」。ある捜査関係者は吐き捨てた。
急増する中国人犯罪。それに追いつけない捜査。日本人が犯罪防止のために設けた壁も彼らは日本人が予想だにしない方法で小さな穴を開け、そして最後には完璧(かんぺき)に壊してしまう。
摘発された中国人犯罪者はニヤニヤしながらこう話した。「中国の警察官の取り調べの方が怖い」と。
2002/05/22 (産経新聞朝刊)
治安 襲来する事件(15) 【出稼ぎの街】日本の家、鍵ないも同然 ( 5/22)
平成十二年の晩秋。中国・福建省の省府・福州市郊外にある福州長楽国際空港に降り立った警察当局の窃盗事件担当の捜査幹部は、だだっ広いロビーで繰り広げられる異様な光景を目の当たりにした。
名古屋行きの国際線旅客機に乗り込もうとする二十歳くらいの若者を親族らしき数十人が取り囲んでいる。おそらく見送りだろうが、多くがつぎはぎだらけの服を着て、悲壮な顔つきで盛んに大声を張り上げている。
「ただの見送りにしては様子が変だ」。そう思って捜査幹部が見送りの集団に近づいてみると、それぞれがクシャクシャに丸めた紙幣を若者のポケットにねじ込んだり、投げつけたりしながら頼み事をしているようだ。「餞別(せんべつ)だろうか。それとも土産の要求なのか…」。ふと、嫌な予感が走った。「まさかピッキング盗をみんなで送り出しているのではないだろうな…」
福建省は「蛇頭」による日本への集団密航の出航地と出稼ぎピッキング窃盗団の出身地として有名になった。この捜査幹部がこの地を訪ねたのも、現地公安当局に対し、窃盗団壊滅に向けての捜査協力と現地での取り締まり強化を求めるためだった。
実は上海の公安当局にも同じ要請を行ってきたのだが、返ってきたのは「犯罪者はきっちり取り締まっており問題はない」「上海マフィアなど存在しない」と木で鼻をくくったような言葉ばかり。虚脱感を感じながら席を立ち、次に福建省を訪問することを告げると、相手側の公安当局幹部は「あそこならやりかねない」とばかりにニヤリと笑った。
福建省の公安当局での会議も、やはり不毛だった。いくら福建マフィアのリストや資料を突きつけても、現地当局は「提示される犯罪グループは存在しない」「わが公安当局の取り締まりに問題はない」と譲らない。ただ、耳かきのような金属を使って鍵を開けるピッキングの手口について「この地方には、古くからその手の窃盗手法があった」と言質を取ったことが唯一の収穫だった。 ≪戸締まり厳重≫
滞在中は監視役の案内員がぴったりと寄り添い、行動を厳しく制限されたが、捜査幹部はなんとか相手をごまかして一人、街に繰り出した。
あちこちでビルや道路の建設工事が行われていた。クレーンなどの重機はほとんどなく、人海戦術。数え切れないほどの職人がスコップで穴を掘ったり、竹を組んだ足場の上でれんがを積み上げたりして、どこもひどくほこりっぽかった。
交通ルールは皆無と言ってよかった。バス、タクシー、人力車、トラクターなどが好き勝手に運行し、クラクションの音で話もできないほどのやかましさだった。歩行者はその合間を縫うように横断する。
だが、捜査幹部がもっと驚いたのは、犯罪対策の厳重さだった。れんが作りの集合住宅やホテルは、窓だけでなくベランダまで、太い鉄さくが上から下まで張り渡され、まるでおりのよう。商店は日暮れ前にさっさと店を閉め、シャッターの下に拳よりも大きい南京錠を二つも三つも取り付けた。
ピッキング盗で逮捕した福建省出身の中国人が「日本の家の鍵なんて、ないのといっしょ」「日本で自動販売機を見て『金庫が外に置いてある』と驚いた」と供述した意味がようやく理解できた気がした。 ≪場違いな豪邸≫
現地の公安当局は、寺や名跡に案内し、「観光都市」をアピールしようとしたが、捜査幹部が興味を持ったのは、移動中に車から見える郊外の街並みだった。
都心部とは違い、薄黄色の砂ぼこりにかすむ畑と、簡素な家屋の群れがどこまでも続く。れんがを積み上げただけの家屋は電気も水道も整備されていないようで「貧困」そのものだった。
そんな中に三−五階建てのアパート風の居宅がポツポツとそびえ立つ。どれも白壁で場違いなほど豪華だ。
「もしやあれがピッキング御殿ではないだろうか…」
そう思った捜査幹部は「日本で逮捕されたピッキング犯が『日本で稼げば、故郷に二−三年で豪邸を建てることができる』と言っていた。あの家はそうではないのか」と案内役の公安関係者に聞いてみた。
公安関係者は一瞬、けげんそうな表情を浮かべた後、すぐに聞こえないふりをして背中を向けた。
2002/05/21 (産経新聞朝刊)
治安 襲来する事件(14)【恩を仇で】凶悪犯に転落した留学生 ( 5/21)
大分県別府市の北部に位置する山香町。農村風景が広がる静かな町で、建設会社経営の吉野諭さん=当時(七三)=は「日本のお父さん」と遠く故郷を離れた中国人留学生たちから慕われていた。
吉野さんは戦時中、中国吉林省の化学工業の専門学校に通った。終戦直後、中国共産党の捕虜になったが、吉林市の住民に親切にしてもらった。これを恩に思い、引き揚げ後は中国残留孤児の身元捜しや留学生の身元保証人を務め、「日中友好の懸け橋」となった。
ところが、今年一月十八日未明、吉野さん夫婦は自宅で強盗にあい、吉野さんは背中に包丁を刺されたまま息絶えた。
中国人四人と韓国人一人の計五人(二人は指名手配中)の犯行で私立別府大学の現役留学生と元留学生だった。
グループには吉野さんから世話を受けた留学生もいた。だが、「金を持っていそうだ」。恩人である吉野さんに刃を向ける短絡的な凶行だった。五人のうち、二人は別府事件の約三週間前の昨年暮れ、大阪・キタのビジネスホテルで、電話で呼んだ派遣型風俗嬢=当時(三五)=の手足を粘着テープで縛り、全身を十六カ所もメッタ刺しし、現金とキャッシュカードを奪った。 ≪苦しい生活≫
五人は「犯罪」をするために日本にやってきたわけではない。経済大国ニッポンの豊かな学生生活にあこがれ、「青雲の志」を抱いて来日。その夢がついえたのは授業についていけなかったことだけでなく、世界一物価が高い日本での生活苦だった。金銭欲しさのため、留学生は凶悪犯に転落した。
「親からの仕送りが遅れている。バイトも見つからない」
吉野さんの会社でアルバイトをした経験のある犯人グループの中国人留学生は授業料を滞納し、大学側に経済的な困窮を打ち明けていた。平成十二年に入学した三人は欠席が目立ち始め、翌年、相次いで退学した。
アジア系風俗エステ店を狙った緊縛強盗事件が昨年、東京や大阪など全国で多発した。
その中で、警視庁と大阪府警に逮捕された強盗団七人も東京や横浜、神戸の日本語学校に通っていた中国人元留学生。遼寧省や吉林省など中国では比較的高学歴とされる東北部の出身者が中心だった。一人は首都圏の私立大学や高校でバドミントンのコーチを務めていた。
強盗団七人は入国後、同じ地域で生活していたわけではない。学校を辞めたあと、都内の知人宅を転々とするうちに知り合った。
「従業員の女性は不法滞在が多いので、警察に通報されないと思った」。金のため同郷人の“弱み”につけ込んだ犯行だった。
警察庁によると、平成十三年中の留学生を含む来日外国人犯罪(刑法犯および特別法犯)の摘発件数は二万七千七百六十三件で、摘発人数は一万四千六百六十人。前年と比べ、件数で10.4%減、人数は15.3%増となり、摘発人数は過去最多を記録した。
国籍別でみると、中国人が摘発件数・人数の約四割を占め、件数は十年前の六倍と急増している。
≪先輩から指南≫
別府大は学生数約三千人のうち、留学生は約四百人。三年足らずで五倍に増加した。留学生の四割を占める中国人だが、中国は国土が広いため、入学に際し、面接試験をすることが難しく、書類選考だけで許可せざるをえない実情がある。
文部科学省によると、日本への留学生は年々増加傾向にある。昨年五月一日現在、留学生は過去最高の約七万九千人。出身地別では中国、韓国、台湾の順となっており、中国が半数以上(55.8%)を占めた。
留学生増加の背景には、多くの中国人留学生が首都圏に“出稼ぎ”に行ったまま学業実体のなかった山形県酒田市の酒田短大のように、少子化時代を迎え、留学生受け入れで経営の安定化を模索する大学側の思惑もある。
大阪府警の捜査幹部は「金ほしさに入国する外国人に対して、金ほしさに安易に入学許可する日本の学校がある」と指摘。そして「先輩中国人が日本で簡単に金を稼げる手段として後輩に犯罪を教えていることもあるだろう」と話す。
留学生の多くはまじめに勉学に励み、犯罪とは無縁だ。しかし、その一部が凶悪犯罪に走るケースが目立ち始めている。
「どこの大学でも(留学生の)問題が起こらないとはかぎらない」。西日本のある大学関係者はこう警告した。
2002/02/12 (産経新聞朝刊)
昨年摘発の中国人刑法犯 過去最悪3343人「凶悪化」「地方拡散」目立つ ( 2/12)
昨年一年間に摘発された中国人刑法犯の数が、初めて三千人を超えた前年を上回り、過去十年間で最多を更新したことが十一日、警察庁のまとめで分かった。中国人刑法犯は、来日外国人の刑法犯の約半数を占め、各国のなかでも突出している。「凶悪化」「地方への拡散」の傾向も目立っており、エスカレートする一方だ。(田中夕介)
「裏切られた思いだ…」。先月、大分県山香町で建設会社会長、吉野諭さん=当時(七三)=が中国人留学生らに刺殺された事件。犯行に及んだ五人のうち、一人は吉野さんの会社でアルバイトをし、別の一人は日本留学の際に吉野さんが身元保証人になっていた。
中国との交流に尽力し、「日中の懸け橋」として知られた吉野さん。自分の子供のように面倒をみてきた留学生らの犯行に衝撃が走った。
捜査本部の調べによると、犯行は金目当てで、吉野さんが身元保証人になっていた中国吉林省出身の元留学生(二三)が、吉野さんについて仲間に話をしたことから、吉野さんが犯行の標的にされた可能性が高いという。
山形県羽黒町では昨年四月、資産家で知られる公務員方に複数の男が侵入、公務員の妻=当時(五一)=の手足を粘着テープで縛り、左胸を包丁で刺して失血死させたうえ、当時高校二年の長女にも切り付け、けがを負わせる事件があった。
男らは骨董(こっとう)品を奪う目的で侵入したが、何も取らずに逃走。この事件で東京都内に住む中国人三人を含む七人が逮捕された。
同庁によると、昨年一年間に刑法犯で摘発された来日外国人は七千百六十八人で前年比、八百三十九人増加。うち中国人は三千三百四十三人で、前年より三百五人増えた。
過去十年間で、摘発された来日外国人が最も多かったのは平成五年の七千二百七十六人だが、この年に摘発された中国人(二千四百九十人)は昨年より八百五十三人少なく、近年の中国人犯罪の急増を裏付けている。
こうした中国人犯罪の最近の傾向が「凶悪化」と「地方への拡散」だ。
大分や山形の事件は「盗みに入る中国人は日本人にけがはさせない」というそれまでの中国人犯罪の"前例"を破り、殺傷事件に発展した。
山形の事件は、地縁血縁関係で結びついたグループが日本人を手引き役として警戒の緩い地方を狙い、犯行後に首都圏の拠点に戻るという"ヒット・アンド・アウエー方式"の犯行でもあった。
増加する来日中国人犯罪をめぐっては村井仁国家公安委員長が一月、中国・北京を訪問した際、摘発に向けて日中警察当局間の協力を強化していくことで一致した。
しかし、「日本ほど仕事がしやすい国はない」とうそぶき、退去強制処分となっても再び、密入国で日本に舞い戻ってくる中国人ら来日外国人犯罪者は後を絶たない。
日本の治安の根幹を揺るがすまで力をつけた犯罪集団への対策が急務となっている。
2002/05/20 (産経新聞朝刊)
治安 襲来する事件(13) 【要銭不要命】だまされる日本人は赤子 ( 5/20)
「取調室に入って驚いた。やさ男で、見るからにインテリ、大学の助教授といっても通用する。こんな男が強盗をするのかと思った」
中国人容疑者の取り調べの通訳を大阪で十五年にわたって務めてきた渡辺尚さんは振り返る。
梁少飛容疑者=当時(三七)=は平成十年、東京・銀座や大阪・鶴橋などで、短銃や青竜刀で店員を脅し、宝石店強盗を繰り返していた中国人グループの首謀者だった。
梁容疑者は容貎(ようぼう)とは裏腹に、一回二百万円で誘った中国人留学生に対して、「事件のことを他人に話したら、組織に本国の家族を皆殺しにさせる」という誓約書に指印を押させ、忠誠を誓わせていた。梁容疑者は香港の「黒社会」(マフィア)である「三合会」のメンバーだった。
「あのころから中国人犯罪者がこぎれいな服装で、ロレックスの時計なんかする男も増えた」と渡辺さん。犯罪そのものも同じ中国人の仲間を襲うものから、日本人に標的が変わった。
日本に来た理由を聞くと決まってこう答えた。「打工賺銭」、つまり、「ビジネス」である。その一つが強盗であり、密輸であり、密航である。
「中国人にとって金を稼ぐことがビジネスで、タクシーの運転者と強盗の意識の差はない。『要銭不要命』(金のためなら命も要らぬ)がモットー。殺人を犯してもそれが目的ではない。中国人に心中や痴情のもつれの殺人なんてほとんどないでしょう。命は金とは引き換えにできるが、心とは引き換えにできない」。数々の中国人犯罪者に接してきた渡辺さんの言葉だ。 ≪秘密結社≫
「黒社会は日本の暴力団と比較されるが、違う。地縁血縁を中心にした宗教や清掃業者、タクシー運転手、お手伝いさんなどの組織と同じ中国伝統の秘密結社。というよりも公のサービスを受けることができない人間の互助組織の一部」。城西国際大学の徳岡仁教授は説明する。
中国の歴史は互助組織が変えてきた。十九世紀の清末も、「打倒清」を目標にする宗教集団や政治集団が現れ、梁容疑者が属していた「三合会」もその一つ。「白蓮教徒の乱」を治めるため、清王朝は十年の歳月と年間予算を超える支出を強いられて疲弊、とどめを刺したのが義和団の乱だった。現在、中国政府が法輪功を警戒する原因はここにある。
香港誌「動向」によると、黒社会は中国全土で五千三百組織あり、メンバーは八百万人を超し、さらに急増している。
地方から都会に出稼ぎに来た「民工」が仕事がなく、路頭に迷った末に故郷のツテで互助組織に所属、窃盗や強盗、盗品売買などの犯罪に手を染めている。
「国民は国から公的なサービスを受けていないので法律なんて関係なく、順法精神はまったくない。互助組織の規律が法律で、黒社会は組織のビジネスが犯罪というだけ」と徳岡教授は話す。 ≪リピーター≫
「香港の取り締まりが厳しくなったので日本で仕事をしようと思った」。梁容疑者は供述した。当時、一九九七年の香港返還後、中国政府は黒社会を徹底的に取り締まった。だが、黒社会の闇は深く、中国全土や日本をはじめアジア各国に拡散しただけだった。
中国で死刑にされた犯罪者は年間三千人に上るといわれる。
「ほとんどが見せしめのための死刑。だが、巨大な犯罪大国のごく一部。多くの犯罪者は捕まることがなく、一生を終える。罪を犯しているという意識がなく、逮捕されるという意識もない」。徳岡教授は指摘した。
中国人犯罪者は本国の意識のまま、金が道端に落ちているような「黄金の国・日本」にやって来る。中国には、公衆電話ボックスや自動販売機がない。これについて中国のある市民はこう答えた。「そんなもの箱ごと、持っていかれてしまうよ」。中国人の常習犯罪者にとって日本がどう映っているか…。
「彼らにとってだますより、だまされる人間が悪い。日本人なんて赤子。強盗に入り、居直って殺すのも手向かう方が悪く、組織や身内以外の命はなんとも思っていないので簡単。殺す方も殺される方も『要銭不要命』」と渡辺さん。「だますより、だまされる方が悪い」「金のために命は要らない」
このことを理解できない限り、中国人犯罪者は「犯罪リピーター」として来日を繰り返す。そして、お人よしの国でますます増殖していく。
2002/05/14 (産経新聞朝刊)
治安 襲来する事件(9) 【ヒットアンドアウエー】日本人と共謀し「出稼ぎ」 ( 5/14)
大阪府や兵庫県の高級住宅街で平成十年春からの約一年間に、観光ビザで入国した韓国人らによる緊縛強盗事件が二十件以上相次いだ。
いずれも狙われたのは医師や会社役員、大学総長、歌舞伎役者などの資産家。念入りに下調べした上で侵入、家人を縛りあげ刃物を突きつけ、「カネ」「キンコ」などと片言の日本語で脅し、現金などを奪うという荒っぽい手口で、被害総額は二億円を超えた。
犯人の韓国人は最初から“仕事”目的で来日し、案内役には在日韓国人や日本人が関与する構図。「韓国人スリ団」ならぬ、凶悪な「韓国人強盗団」の襲来だ。外国人犯罪の増加が指摘される中、犯罪目的で来日する外国人によって日本の治安が脅かされる実態もまた、浮き彫りになった。 ≪カネ、キンコ≫
一連の緊縛強盗事件では犯人グループはいずれも目出し帽などで顔を隠し、手袋をはめて犯行に及んでいたため指紋を残していなかった。
「片言の日本語」「アジア系外国人のようだった」などの被害者の証言はあったものの捜査は当初、難航。連続緊縛強盗事件はついに、縛り上げられた被害者が窒息死するという強盗致死事件にエスカレートした。グループが十一年五月十三日未明、大阪府豊中市東豊中町の会社社長方に押し入った事件だ。
犯人たちに縛られた住み込みの家政婦=当時(六六)=が布団の上で死亡。家じゅうが荒らされ、金品も奪われていた。
「とうとうここまできてしまった…」。被害者が亡くなったことは捜査本部に衝撃を与えた。だが、捜査の間隙(かんげき)を縫うように、この事件から二日後、緊縛強盗事件はまた起きた。
大阪府寝屋川市成田南町の会社社長方に午前三時ごろ、日本刀のようなものを持った三人組の男が押し入り、妻を電気コードで縛り上げ、「カネ、カネ、キンコ」と片言の日本語で脅した。三人組は妻が騒がないように口をタオルでふさぎ、現金二十万円とダイヤの指輪、車のキーなどを奪って逃走したのだった。豪邸だけを“ピンポイント”で狙う手口はグループの中に、地理や住人の生活ぶりなどの情報に精通した人間がいることを示していた。
さらに、「マスコミのニュースに出たら、また来るぞ」と流暢(りゅうちょう)な日本語で脅された被害者もいたことから、グループには日本人が「指南役」として加わっている可能性があるとの見方が出てきた。
ところが、寝屋川の会社社長方の事件以降、このグループによる犯行はピタリと止まった。 ≪出張感覚≫
昨年四月、捜査は突然、進展をみせる。観光ビザで入国していた韓国人が東京都内で民家に盗み目的で侵入し、警視庁に逮捕された。自称・雑貨商の梁淳吉被告(六二)。梁被告は頻繁に来日を繰り返していたが、出入国記録をみると、いずれも大阪、兵庫の連続緊縛強盗事件直前に入国し、直後に出国していた。それも捜査網をかいくぐるかのように関西国際空港から入り、成田空港から出るといった具合に頻繁に利用する空港を変えていた。
一連の事件のうちのひとつの現場でみつかった、たばこの吸い殻に付着していた唾液(だえき)がDNA鑑定の結果、梁被告のものと一致。来日した際の人脈をたどると、飲食店経営の在日韓国人、李●洙被告(三九)が浮上。李被告は指定暴力団系の組員とのつながりが指摘されており、現場近くで目撃された車も李被告の所有のものだった。
取り調べやその後の捜査で、運転手役の配達業、池上肇被告(三一)ら四人も芋づる式に判明し計六人が逮捕、起訴された。
捜査本部は実行犯の別の韓国人二人について、韓国当局に身分照会する一方、指南役として犯行に関与した日本人を手配している。
実行犯の梁被告ら韓国人数人が関西国際空港に到着すると、李、池上の両被告ら日本側のメンバーが出迎え、高額の金品を奪えそうな家を下見した上で、犯行に及び、直後に韓国へと逃亡を繰り返す「ヒットアンドアウエー」方式の凶悪犯罪だった。
「数年前に東京や大阪で韓国人スリ団による被害や香港の爆窃団による宝石店荒らしが相次いだが、『出稼ぎ犯罪』は強盗にまで及んでいる。出張感覚で犯罪組織が来日し、日本の受け入れ組織と共謀して凶悪事件を引き起こすケースは増えそうだ」。捜査関係者は苦悩の表情を浮かべた。 ●=火へんに亢
