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日本戦略研究所


 「政界のチャイナスクール」橋本派 

2002/07/11 (産経新聞朝刊)

中国 国交30年の現実(9) 第1部 不信の構造政界のチャイナスクール親中路線を引き継いだ橋本派 ( 7/11)

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 終戦記念日に近い昨年八月四日、自民党の野中広務元幹事長ら与党訪中団は、中国河北省の渤海に面した避暑地、北戴河の迎賓施設を訪れた。玄関先に出迎えたのは、江沢民国家主席の腹心、曽慶紅共産党中央組織部長だった。

 日本の政治家が中国要人に北戴河に招かれるのはまれで、中国が野中氏を重視している表れだった。野中氏は、曽氏とは数年前から親しくなり、腹を割った話ができる相手だ。しばし旧交を温めた後、曽氏が切り出した。

 「中国人民が不満を持たず、刺激を受けることのないよう配慮してほしい」

 終戦記念日の靖国神社参拝を表明していた小泉純一郎首相に対し、参拝を断念するよう働きかけてほしいとの要請だった。野中氏は「首相自身が判断すべきこと」としながら、「首相は靖国神社の歴史を検証し、経過を直視してほしい」と述べ、参拝には反対する立場を伝えている。

 野中氏が自民党内で実力者の地位を固められた理由の一つには、田中角栄元首相以来の「親中」伝統を引き継ぐ橋本派幹部として中国要人とのパイプがあったと指摘する声が強い。その最大のパイプは曽氏であり、野中氏の訪中時、曽氏の訪日時に二人は欠かさず会い懇談する。

 日中関係に深く関与した政治家が次々に物故したいま、野中−曽パイプは、ある意味では貴重ともいえる。しかし、それが常に日本の国益に合致するかは別問題だ。

         ◇

 激しい日中対立に発展した瀋陽の亡命者連行事件。その一週間後の五月十五日、野中氏は国会近くの派閥事務所でこう話した。

 「総領事館入り口で(中国武装警察と駆け込んだ北朝鮮住民が)もみ合う場面が、テレビで特徴的に映し出されているが、完全に仕組まれた映像だ。これを流し続けることは、日中関係にとっても世界にとっても問題じゃないか」

 野中氏の真意は「事件を不必要に拡大すべきではない」というものだったが、この映像で中国側の不可侵権侵害への怒りと、いわゆる脱北者への同情をかき立てられた国民には違和感を与えた。野中氏の発言は、外務省チャイナスクールの対中迎合姿勢に通じている。

 チャイナスクールの代表格の阿南惟茂駐中国大使が大使館内会議で「不審者は追い返せ」と発言したことが問題になった後、野中氏や橋本龍太郎元首相は「大使は、言うべきことを言ったまで」と擁護した。橋本派が阿南氏の大使任命を工作したのはよく知られている。

 昨年四月の台湾前総統の李登輝氏訪日をめぐり、外務省アジア大洋州局長だった槙田邦彦シンガポール大使が、当時の森喜朗首相や川島裕外務事務次官が入国ビザ発給を了承したにもかかわらず、「申請がない」などと虚言を弄(ろう)して抵抗した背景にも、橋本派の画策があったとの証言がある。安倍晋三官房副長官が槙田氏に対し「一局長の行動でここまで日本が傷ついたことはない。罪は万死に値する」と異例の名指し批判をした のは記憶に新しい。

だが、その背後に橋本派がいたとしたら、中国が野中氏らを厚遇するのも当然だ。

         ◇

 「橋本派はよく言えば対中関係重視、悪く言えば中国べったり」と自民党の若手議員は話す。

 一九九七(平成九)年、首相(当時)の橋本氏に持ちあがった中国人女性との交際疑惑も、中国との距離のなさを示すものだった。その女性が、中国の公安機関に所属していたことなどから、「国の信頼、外交にかかわる問題だ」と羽田孜民主党幹事長(当時)らが追及したが、中国側は意に介さなかった。

 橋本氏はその前年の七月末、首相としては八五年の中曽根康弘氏以来十一年ぶりに靖国神社を参拝したが、中国側は外務省報道官が「中国とアジア人民の感情を傷つけた」との声明を発表しただけだった。

 昨年八月と今年四月の小泉首相の参拝に対して、外交ルートで即刻抗議したのとは対照的だった。

 そうした中国の対応は時期や状況の違いだけでは説明できない。日中国交正常化以来、日本の政界が離合集散を繰り返す中で、自民党の最大勢力を維持、親中路線を推進してきた「田中角栄系列」への信頼に基づいている。

 中国の田中氏への高い評価はいまだに揺るぎない。竹下登元首相が八七年に田中派を割り「経世会」を結成した際、中国要人は冷ややかな反応を示したが、その竹下氏は同年首相に就くと、対中円借款で大盤振る舞いするなど、親中路線を進めた。すると中国の竹下評価は急上昇した。

 親中路線を引き継いだ橋本派は、政府の対中政策に大きな影響力を及ぼす。「政界のチャイナスクール」 と陰口をたたかれる理由だ。(中国取材班)

 

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